現在までに、ウシ・プリオン遺伝子(PRNP)中には多数の多型が存在することが知られている。最近、Sander et al.(2004)はドイツのウシにおいてBSEの感受性とPRNPの推定上のプロモーターに見られる23bpの挿入/欠失(indel)多型の頻度分布との間に有意な関連を報告した。そこで本研究では、23bpのindel多型について、アジア在来牛5集団324頭、ミタン(Bosfrontalis)4頭において対立遺伝子の頻度分布を調査し、Sander et al.(2004)のデータと比較した。得られた結果を以下に述べる。 1)23bpのindel領域は、調査したすべての集団で多型的であった。また、ミタンを除くすべての集団で、23bpのindelをもたない対立遺伝子(-)の頻度が23bpのindelをもつ対立遺伝子(+)の頻度よりも高かった。 2)ベトナム北部在来牛およびミタンの対立遺伝子の頻度分布はSander et al.(2004)の報告したBSE罹患牛のそれと有意な差が認められた。 3)モンゴル、ベトナム南部ならびにミャンマー在来牛の対立遺伝子の頻度分布はBSE罹患牛のそれと似ていた。さらに、ベトナム南部およびミャンマー在来牛の対立遺伝子の頻度分布は、正常牛のそれと有意に異なっていた。
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