研究概要 |
ウシ卵丘細胞付着卵母細胞(CEO)の体外成熟培養(IVM)において、ヘパリン結合性成長因子であるミッドカイン(MK)は卵細胞質成熟を促進し、さらにMKはレチノイン酸(retinoic acid, RA)応答産物であることが明らかにされている。本研究では、ウシCEOのIVMにおける卵細胞質成熟と卵丘細胞のアポトーシスにおよぼすMKとRAの効果を明らかにすると共に、アポトーシス抑制効果をもつカルニチンの影響を検討した。IVM期間に起こる卵丘細胞のアポトーシスをLigation-Mediated PCR(LM-PCR)法で経時的に検討した結果、IVM開始後18時間にアポトーシスが検出され、24時間においてその程度がより顕著になった。しかし、MK(200ng/ml)あるいはRA(10nM〜1μM)をIVM培地へ添加することによって、卵丘細胞のアポトーシス抑制と、卵細胞質成熟の促進が観察された。続いて、卵丘細胞および卵母細胞において、カルニチントランスポーターが発現していることから、IVM培地にカルニチンを添加した結果、活性型ミトコンドリアの卵母細胞表層から卵細胞質内部への移動が起こると、および、卵母細胞の細胞質成熟が促進されることが明らかとなった。さらに、MK処理によって卵丘細胞での発現が促進される遺伝子をサブトラクション法で検索したところ、アポトーシス抑制作用に関連する遺伝子(トポイソメラーゼIIα)および卵巣特異的に発現する未知の液成因子であるOVN6-2をコードする遺伝子を検出した。MKやRAの卵丘細胞を介した卵細胞質成熟促進効果にそれらの遺伝子発現が関連している可能性が示唆される。
|