本研究プロジェクトで得られた研究成果は以下のとおりである。 A.瞬時共培養体外受精システムにおける共培養条件の詳細な検討 瞬時共培養時における種々の影響を調べた結果、共培養後にカフェインが存在すると多精子受精卵率が増加し、アデノシン存在下で精子を前培養すると、共培養時のカフェインの存否に関係なく多精子受精卵率が改善されることを明らかにした。 B.瞬時共培養後の効率的な精子受精能獲得誘起手法の確立 精子受精能獲得誘起手法の検討を行い、beta-mercaptoethanol(BME)の存在は精子の受精能獲得および先体反応を阻害するが、過酸化水素の添加は逆にそれらの反応を促進することを明らかにした。また、プロテアーゼ・インヒビターの存在下で精子は受精能獲得や先体反応に何等影響を受けないが、卵子透明帯への接合に結合する精子の数が減少することを明らかにした。 C.瞬時共培養体外受精システムにおける共培養条件の詳細な検討 共培養時およびその後の受精培養時の酸化ストレスが受精に及ぼす影響について調べるために、それぞれの培地にBMEを添加してその影響を調べた。その結果、共培養中にBMEが存在すると精子の受精能獲得・先体反応を阻害し、精子侵入率が低下されるが、その後の受精培地中での存在は卵子の表層粒反応の程度を改善し、単精子受精卵率を増大した。さらに瞬時共培養後の受精培地および初期発生培地にBMEを添加することで、卵子自体の表層顆粒反応や体外受精後に発生した胚盤胞の細胞数を改善することを明らかにした。 D.酸化ストレス軽減による精子受精能獲得誘起阻止現象を利用した精子の液状保存法の確立 還元剤を豚精子の液状保存に利用できないかと試みた結果、保存液中にシステインを添加することで豚精子の10℃での液状保存中の生存率や受精能未獲得状態の維持に有効であることを見出した。 E.瞬時共培養システムに供する卵子の体外成熟システムの開発 瞬時共培養に用いる卵子の体外成熟システムの構築を目指して、ロスコビチンによる処理で採取した卵母細胞を48時間培養保存後に体外成熟・瞬時共培養を行っても、保存培養していない対照区と大差なく成熟し、受精することが可能であることを見出した。
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