研究概要 |
研究の概要 本年度は、一昨年と昨年度でウシプロラクチン関連タンパク質-I(PRP-I)を対象として研究を進めてきたことに加えて、PRP-VIについても標的組織とマトリックス親和性について検討した。PRP-VIタンパク質のアミノ末端側にヒト胎盤性アルカリフォスファターゼを融合させた組換えタンパク質(AP-PRP-VI)を293細胞(ヒト胎児腎臓由来株化細胞)で発現させた。この組換えタンパク質は分子量約130000のタンパク質として発現し、アルカリフォスファターゼ活性を有していた。この融合タンパク質をプローブとしてウシの凍結組織切片と反応させてin situにおける結合特性を検討したところ、AP-PRP-VIは動脈の中膜や結合組織に結合し,細胞外マトリックスへの親和性が示唆された。AP-PRP-VIのin situ標的組織は、胎盤性ラクトジェンの場合とは異なっており、PRP-VIはプロラクチン受容体に結合しないことが示唆された。そこで、APと融合していないPRP-VIを組換え発現させてNb2バイオアッセイを行ったが、PRP-VIにはプロラクチン様生物活性は認められなかった。 マトリックスコートされた96穴プレートを使用してAP-PRP-VIの標的マトリックスについて検討したところ、AP-PRP-VIは被検物質(I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ポリリジン)に結合せず、組織切片に結合する際のカウンターパートはこれらのマトリックス以外のものであることが示唆された。 今年度の成績から、昨年検討したPRP-Iと同様にPRP-VIもマトリックス親和性があることが示された。PRP-VIは胎盤の栄養膜細胞で産生された後に、近傍の細胞外マトリックスに捕捉される事が示唆され、マトリックス改変とともに遊離して作用を発現する事が伺われた。PRP-VIのこのような性質は、作用部域と作用時期を特定し、作用局所濃度を維持する意味があるものと推察され、着床と胎盤形成が子宮内の限局された部域でのみ行われる反芻類の胎盤形成に重要な役割を果たしているものと思われた。
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