ニワトリを始めとする鳥類は、空腹時であっても300mg/dl以上の高血糖を維持しているにもかかわらず、循環系、神経系の障害といった糖毒性が発生しない。本研究では、鳥類の血糖値が高いことに関しては、積極的に高いレベルにコントロールしているのか、インスリンの作用不全の結果として高くなっているのかはっきりさせ、鳥類を新しい糖尿病モデル動物として確立することを目指すとともに、汎用されている齧歯類の糖尿病モデル動物と比較しながら、なぜ鳥類の組織、細胞には糖毒性が発生しないのかを明らかにすることを目的とした。ニワトリの血糖値が高いことに関して、骨格筋を始めとする末梢臓器のインスリン応答性が低く、血糖値を下げる機序が機能していない可能性と、積極的に高血糖を維持している可能性が考えられるが、血中グルコース負荷試験を行い、グルコース消失速度を調べたところ、上昇した血糖値は極めて速やかに投与前のレベルに回復することが判明した。このことは、充分な制御がかかった上で高血糖を維持していることを意味する。しかしながら、哺乳動物でインスリンの作用に不可欠な4型グルコース輸送体(GLUT4)の存在が骨格筋および脂肪組織に存在するか否か、ウエスタンブロット法で調べたところ、両組織において検出することができなかった。また、インスリン刺激後に骨格筋におけるインスリン受容体の自己リン酸化、IRS1-4のチロシンリン酸化、PI3-kinaseの活性化、MAP kinaseの活性化を調べたが、いずれも応答は認められなかった。従って、ニワトリの血糖降下機序が、哺乳動物とは本質的に異なることが示唆された。
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