研究課題
基盤研究(C)
ニワトリ卵の発生過程での卵白タンパク質の役割についてアミノ酸源以外はほとんど知られてなかった。卵白の主要タンパク質であるオボアルブミンはセリンプロテアーゼインヒビターのファミリーに属しているが、プロテアーゼに阻害が見られないことから、アミノ酸源以外の機能はないとされてきている。しかし、オボアルブミンが発生過程で構造変化を起こし、熱安定型に転換されることと胚の組織に分解を受けずに取り込まれることから、アミノ酸源以外の機能に期待が持たれた。本研究ではオボアルブミンの生理機能を明らかにするため、オボアルブミンを胚から除去する方法を確立し、除去胚の形態形成を観察した。オボアルブミン除去胚は多くの形態発生異常を起こした。特に中枢神経系の形成に異常を生じ、神経管閉鎖が阻害されるものとなった。オボアルブミンは神経管形成において重要なはたらきを持つことが示唆され、形態形成因子との関わり合いに興味が持たれた。本研究ではオボアルブミンの生理機能を明らかにすることを目的として、オボアルブミン除去胚を使って神経管形成におけるオボアルブミンの役割を追究すると共にオボアルブミンの構造変化と機能発現に考察を加えた。その結果、オボアルブミンは形態形成遺伝子であるFGF8やPax3の発現に影響を与え、神経細胞への分化に関係する。オボアルブミンを除去すると神経細胞への分化が抑制され、表皮細胞の分化が促進する。このため、神経管の表皮化が進み、正常な神経管の形成が損なわれることが示唆された。また、オボアルブミンの構造変化についてはreactive center loopの部分的な挿入により、タンパク質構造がコンパクトになり、熱安定型になると推定された。本研究はこれまで栄養源としてしか取り上げられなかったオボアルブミンの生理機能を明らかにでき、食品学だけでなく、発生生物学やタンパク質化学に大きく貢献するものあった。
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