研究課題
本研究では、進化的に保存された新規な蛋白質PSP(過塩素酸可溶性蛋白質)が乳腺上皮細胞の分化増殖と乳脂肪の合成にどのような役割を果たしているのかを免疫組織化学的および組織計測学的ならびに生化学的に解析し、乳腺におけるPSPの機能を解明することを目的とした。得られた成果は以下の通りである。1.泌乳期乳腺におけるPSPの脂肪酸輸送の動態を授乳後の経時的変加として免疫組織化学的および免疫電顕的に検索したところ、授乳後10分では乳腺上皮細胞内の脂肪的周囲とアポクリン突起が強い陽性を示し、20分後には腺腔内の脂肪粒周囲も強い陽性を示したことから、PSPが脂肪酸輸送に深く関与し、乳汁成分として新生児に移行している可能性も示唆された。2.妊娠、泌乳、離乳といった生殖周期における乳腺内のERとPgRの局在を検索したところ、上皮細胞の核に陽性反応がみられたが、周期特異性は認められなかった。PCNAによる細胞増殖率は妊娠期で高く、ssDNAによる細胞死は泌乳末期から離乳初期に多かった。PSPが分化した乳腺上皮細胞の核に強く反応することから、ERとPgRとの関連性は少ないことが示唆された。3.生後10日齢から90日齢までの乳腺におけるPSPの局在を観察したところ、10日齢で血管内皮細胞および多房性脂肪細胞に、20日齢以降上皮細胞に陽性がみられた。ERおよびPgRの局在を検索したところ、ERは日齢による特異的発現はみられなかったが、PgRは30日齢以降高い陽性率がみられた。PCNAによる細胞増殖率をみると、20日齢で最大となり以後斬減した。ssDNAによる細胞死は日齢による変化はみられなかった。これらのことからPSPは乳腺実質の発達に先駆けて血管構築にも関与していることが示唆された。4.マウスの乳腺から抽出したPSPのアミノ酸配列をシークエンスしたところ、肝臓型PSPと全く同じ配列であった。
すべて 2005
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