研究課題
好中球は、生体に侵入してきた病原微生物を殺菌することが本来の役割である。活性化した好中球は、まずNADPHオキシダーゼによって酸素からスーパーオキシド(O_2-)を産生し、O_2-は過酸化水素に代謝され、さらに好中球のみに存在しているミエロペルオキシダーゼ(MPO)によってH_2O_2を好中球次亜塩素酸(HOCl)に代謝する。このようにして好中球から産生された種々の活性酸素によって病原微生物の殺菌を営んでいるが、その活性酸素が長時間放出されつづけると、時に組織傷害をもたらして炎症性疾患を起こす可能性もある。そこでMPOノックアウトマウス(MPO-KOマウス)やNADPHオキシダーゼのノックアウトマウス(CGDマウス)を用いてこの可能性を検証した。オゾン層の破壊によって地表へのUVBの到達量が増加している。皮膚がUVBに曝されて炎症を起こすと患部に好中球が浸潤する。マウス背部皮膚にUVBを照射した際の好中球の浸潤速度は、MPO-KO/CGD二重欠損が最も早く、CGDマウスやMPO-KOマウスがそれに続き、野生型マウスが最も遅かった。すなわち、好中球が産生する活性酸素は、UVB誘発皮膚炎発症時の好中球の浸潤を制御していることが判明した。活性化された好中球は殺菌後速やかにアポトーシスを起こす。この現象は好中球からの活性酸素の放出が長時間持続すると正常組織にも傷害を及ぼすので、その傷害を極力回避するためのものである。MPO-KOやCGDマウスの好中球のアポトーシスが正常好中球に比べて遅延するメカニズムを探ったところ、PMAで活性化したマウス好中球のアポトーシスにO_2-とHOClはアポトーシスの一連の経路の異なる過程に関わっていることが強く示唆された。
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