研究概要 |
短い汽水域をもつ高知県の室津川河口と防波堤を隔てて隣接する室津漁港、約10kmの汽水域をもち、過去にTDH産生菌の蓄積を確認した島根県の佐陀川汽水域とその河口に位置する恵曇漁港、青森県の野辺地川汽水域と河口から約500m離れた野辺地漁港で水を採取し、腸炎ビブリオとデロビブリオ類縁細菌(BALOs)の分布調査を行った。採水時に水温と塩分濃度を測定した後、検水を実験室に持ち帰り、toxR遺伝子、tdh遺伝子、trh遺伝子を用いたPCR法を利用した最確数法3本法で検体中の腸炎ビブリオの総数、TDH産生菌数、TRH産生菌数を測定した。その結果、腸炎ビブリオは汽水域の下流側を中心に増殖していること、河口と隣接する室津漁港では、汽水域で増殖した腸炎ビブリオが引き潮時に外海に流出し、上げ潮にのって漁港に流入すること、佐陀川の河口内に位置する恵曇漁港では河口に隣接する室津漁港よりも汽水域の影響を受けやすく、漁港内における菌数の変動が汽水域における菌数変動と同調していること、汽水域の上流域における採水日前10日間の総降水量と漁港内の菌数の間には正の相関(Rs=0.640,P<0.01)があることが明らかになった。一方、BALOsは汽水域の長い佐陀川で特徴的な分布をしていた。即ち、汽水域上流部では5‰人工海水中で分離される菌数が多く、下流部には35‰の人工海水中で分離される菌数が多かった。このことから、汽水域には塩分耐性の異なる少なくとも二種類のBALOsが分布していることが判明した。
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