研究概要 |
Lactococcus garvieaeに起因するいわゆるブリのレンサ球菌症は,養殖ブリの重要疾病のひとつである。多くの病原細菌が腸管の糖脂質に結合することにより感染の足場を作り,深部臓器に侵入すること,また本疾病において,起因菌が罹患魚の脳組織に高率に検出されることを踏まえ,腸管および脳におけるL. garvieaeの結合分子を明らかにすることを目的として実験を行った。前年度に引き続きL. garvieae接着リセプターの解析を行うと同時に,抗原を封入したリポソームの評価を行った。また,リポソーム封入抗原の経口免疫による,ブリにおける感染防御能の誘導を試みた。 引き続きL. garvieae接着リセプターの解析:薄層クロマトグラフィーで展開した糖脂質画分にL. garvieaeを反応させ,菌が糖脂質に結合することを明らかにした。また,ブリ腸管の凍結切片において,菌は粘膜糖脂質に接着することを明らかにした。これらの菌の結合性は,材料を糖分解酵素で前処理することにより阻止された。 抗原封入リポソームの評価:ホルマリン不活化L. garvieae菌体を種々の組成のリポソームに再構成して,リポソーム封入抗原の酸(胃液),消化管ならびに膵臓の消化酵素,および胆汁に対する安定性を検討した。その結果,これらの影響を受けず,抗原を保護するタイプのリポソームを選択することが出来た。これらの結果をもとに,ブリへの経口投与に最も適したリポソームを選択した。 経口免疫による感染防御能の誘導:リポソーム封入超音波処理L. garvieaeを飼料に混合投与してブリに経口免疫した。免疫したブリ,ならびに対象として抗原のみを経口投与したブリに対する攻撃試験を,強毒菌を用いて行った。実験結果から,免疫誘導に必要なL. garvieae抗原量,免疫回数と防御との関連を検討した。これらの予備試験の結果に基づき,現在本試験の実施準備を行っている。
|