研究概要 |
本研究は、免疫担当細胞への抗原提示能に優れるリポソームを、ウシ乳房炎の発症予防のための経鼻ワクチンに応用し、ウシの乳房炎予防に有効なリポソーム型経鼻ワクチンの開発を目指した基礎的研究を目的として行われた。平成17年度においては、前年度明らかにされた最適化リポソームに粘膜吸着性を付与させ、粘膜吸着性リポソームによる免疫応答について検討した。さらに、粘膜吸着性リポソームによるウシへの経鼻免疫による免疫誘導実験を行い,下記の研究成果を得た。 (1)粘膜吸着性リポソームによる免疫応答: 経鼻免疫用リポソーム(ジパルミトイルフォスファチジルコリンとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン、モル比1:1の脂質組成に、サクシニル化ポリグリドールを全脂質の30%加えて作成したリポソーム(SucPGリポソーム))を1.5%キトサンと反応させ、粘膜吸着性リポソーム(SucPG-キトサン-リポソーム)を作製し、免疫応答についてマウスを用い検討した。モデル抗原として卵白アルブミン(OVA)を封入した。その結果、SucPG-キトサン-リポソームでマウスを経鼻免疫することにより、OVAに対する免疫応答が強く誘導できることが明らかとなった。また、誘導される免疫応答について解析した結果、液性免疫ならびに細胞性免疫の誘導が確認された。以上の結果から、粘膜吸着性リポソームは経鼻ワクチンとして優れていることが示された。 (2)ウシにおける免疫誘導実験: SucPG-キトサン-リポソームにOVA抗原を封入し、ウシに経鼻免疫を行った。その結果、血清中ならびに乳汁中にOVA抗原に対するIgG、IgA抗体の有意な産生が確認された。このことから、ウシの乳房炎予防に有効なリポソーム型経鼻ワクチン開発の可能性が示された。
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