哺乳動物細胞に広く発現が確認されているコネキシン(Cx)遺伝子は、ギャップ結合(GJ)を介して細胞間の恒常性を維持し、細胞の分化誘導を行い、癌抑制遺伝子として働くことが知られている。ヒト癌では、Cx遺伝子の癌抑制機能に立脚した癌予防・治療・診断法の構築が試みられている。本研究では、犬乳腺腫瘍に焦点を絞り、犬乳腺腫瘍の発生と関連があるCx遺伝子分子種を特定し、その抑制機構の解明を行うと同時に、特定されたCx遺伝子を標的にした犬乳腺腫瘍の新たな癌予防・治療法構築の可能性を探る。 犬乳腺腫瘍組織におけるCx26とCx43遺伝子の発現レベルを定量するrealtime PCRを樹立し、その方法を使って各組織のCx26とCx43の発現レベルを定量したところ、両Cx遺伝子ともに腫瘍の悪性化に伴って抑制傾向が認められた。今年度の結果と昨年度のconventional RT-PCR法による解析結果をあわせて考慮すると、犬乳腺腫瘍の悪性化にはCx43の発現抑制の方がより寄与していると推測されるので、臨床的に犬乳腺腫瘍の予防・治療を考える場合、Cx43が有望なターゲット遺伝子になると考えられる。 細胞培養系およびマウス腫瘍移植モデルを用いてCx43の発現・機能回復を標的にした癌予防・治療の妥当性を検討した結果、機能性成分の中でCx43の発現回復活性が高い成分は、Cx43が癌抑制遺伝子として作用している癌に対して、強力な癌細胞増殖抑制作用を示すことが明らかになった。従って、Cx43の発現回復活性が高い機能性成分は犬乳腺腫瘍の予防・治療に有効と考えられる。
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