研究概要 |
1.健常牛の頸静脈血と第四胃変位罹患牛の頸静脈血・第四胃静脈血の血清NO濃度: 健常牛(n=99)と第四胃変位罹患牛(罹患牛;n=60)の頸静脈血の血清NO濃度は、それぞれ、10.3±7.2、23.5±9.0μmol/L、罹患牛で有意(P<0.01)に高値を示し、罹患牛の第四胃静脈血(n=19)で19.4±6.7μmol/Lで、健常牛の頸静脈血に比べて有意に高値を示した。これらの成績から、血清NO濃度の上昇に基づく胃平滑筋収縮運動抑制が第四胃内ガスの過剰蓄積のひとつの要因であると推察した。 2.健常牛と第四胃変位罹患牛の第四胃体部筋層の免疫組織化学的検索: 健常牛の第四胃体部筋層の胃壁在神経(PGP、VAT, TH, SP, MENK, VIP, GAL, NO)は、筋層で密に分布していた。一方、罹患牛の同部の胃壁在神経は、健常牛に比べて全ての神経要素が明らかに減少していた。これらの成績から、第四胃内ガスの過剰蓄積は、第四胃蠕動運動の低下がひとつの要因であると推察され、本症の予防・治療にNO合成阻害剤の応用の可能性を示唆した。 3.迷走神経切断子牛のX線学的並びに胃壁在神経の免疫組織化学的検索: 迷走神経切断子牛(切断子牛)のX線撮影所見で実験直後に第二胃溝反射の消失と第四胃トーヌス、7日目以降に第四胃アトニーあるいは第四胃食滞が発現した。これら切断子牛の第二胃溝と第四胃体部、幽門洞の筋層に術後4日目からPGPをはじめとする全ての神経要素が減少した。これらの成績から、迷走神経切断によって第四胃アトニー、第四胃食滞が発現し、これは胃体部および幽門洞筋層壁在神経の減少に基づくことが明らかにされた。また、第四胃内ガスの過剰蓄積は、第二胃溝と第四胃の運動低下による第一胃・第四胃間の胃内食び・ガスの移送異常が要因であることが強く示唆された。
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