研究概要 |
本研究では第四胃変位牛における第四胃内ガス蓄積のメカニズムを明らかにする目的で、1)第四胃変位罹患牛における第四胃および一胃内ガス組成,2)健常乳牛と第四胃変位罹患牛における血清NO濃度,3)健常牛並びに第四胃変位罹患牛の第四胃壁在神経の免疫組織化学的検索,そして4)迷走神経切断子牛におけるX線並びに免疫組織化学的検索を行った。 その結果、健康乳牛と第四胃変位罹患牛の血清NO濃度はそれぞれ10.3±7.2、23.5±9.0μmol/Lで、後者で有意に高値を示し、第四胃変位例では胃収縮運動が抑制されていたことが示唆された。また、健常牛の第四胃壁在神経の特徴所見は、胃収縮運動を促進する胃壁筋層のVAT、SP、MENが外筋層で豊富で、単胃動物とは異なる反芻動物の食性を反映しているためであること考えられた。一方、第四胃変位罹患牛では胃運動抑制ニューロンであるTH、NOS、VIP、GALを含めて全てのニューロンが減少し、とくに、第四胃体部と幽門洞での減少が顕著であった。これらの所見は、第四胃変位罹患牛では第四胃壁在神経の減少に基づく第四胃収縮運動低下と同時に運動制御機構にアンバランスが生じ、とくに、蠕動運動のペースメーカーである第四胃体部での第四胃壁在神経の減少は、第四胃内ガスの過剰蓄積の直接関与していることが推察された。さらに、迷走神経切断子牛におけるX線並びに免疫組織化学的検索では、術後1日目に第四胃tonus像および術後4・7日目の第四胃弛緩・拡張像、免疫組織化学的所見では術後4日目に第二胃溝および第四胃で顕著な壁在神経要素の減少が認められ、迷走神経全切断による影響は術後早期に発現することが明らかとなり、また、迷走神経障害が第四胃変位発生の必要前提条件である第四胃アトニーの発生と第四胃内ガスの過剰蓄積に直接関与していることが明らかにされた。
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