研究概要 |
我々はこれまでに、ウシの胎盤停滞発生メカニズムにおける内分泌学的因子の関与の有無を明らかにするために、ProstaglandinF2α(PGF2α)による分娩誘発後の胎盤組織中各種ホルモン濃度の推移を調べ、PGF2α,オキシトシンおよびオキシトシンレセプター等子宮収縮に関与するホルモンが分娩後の胎盤剥離に重要な役割を担っていることや、Endothelin-1およびAngiotensin IIも胎盤剥離に関与している可能性があることを初めて報告している。これまでの内分泌学的な検討に加え、遺伝子レベルで調節機構を解明する目的で、胎盤組織中の各種ホルモンおよび細胞外マトリックス(ECM)のコラーゲン分解に関わるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のmRNA発現動態と胎盤停滞の関連性を検証するための実験を進行中である。胎盤組織サンプルは分娩直後、6時間後および12時間後に母体-胎子胎盤結合部を採取し、それぞれを分離した後に凍結保存を行った。分娩後12時間を経過しても胎盤排出が見られないウシを胎盤停滞群とした。現在までに、凍結したサンプルを融解後ホモジナイズして組織内RNAの抽出操作を終了している。今後、得られた胎盤組織内RNAサンプルをDnase処理およびReverse Transcription処理を行なった後に、リアルタイムPCRを行なって、mRNA発現動態を胎盤停滞群と胎盤正常剥離群との間で比較検討し、ウシ胎盤停滞発生メカニズムにおける各種ホルモンおよびMMP関連遺伝子発現の関連性を明らかにするためのデータベースの作成を行なう計画である。同様に、胎盤剥離前の母体-胎子胎盤組織中各種ホルモンおよびMMP関連遺伝子発現を明らかにすることを目的として、各妊娠月齢のと場由来妊娠子宮より母体-胎子胎盤部を採取して同様の実験を行ない、各妊娠ステージにおける母体-胎子胎盤組織中各種遺伝子発現に関するデータベースの作成も併せて行なう計画である。
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