慢性心不全においては、レニン-アンジオテンシン(RAS)系が亢進する。RAS系にはアンジオテンシン変換酵素とキマーゼによる経路が存在しており、病態にどのように関与しているかは不明な点が多い。そこでRAS系を抑制するための治療薬であるACE阻害薬(エナラプリル)ならびにAng IIタイプ1受容体拮抗薬(ARB:カンデサルタン・シレキセチル)が組織RASに及ぼす影響について検討を行った。イヌならびにネコと同様にキマーゼによるAng II生成経路を有するハムスターを用いて大動脈狭窄モデルを作製し、ACE阻害薬ならびにARBの投与を行った。ACE阻害薬ならびにARB投与群においては心臓超音波検査により心筋肥厚抑制が観察され、心臓/体重比においても有意な減少が認められた。ACE阻害薬ならびにARBによって左心室ACEならびにキマーゼ活性は抑制されなかった。しかし、ACE阻害薬ならびにARBによって、収縮期血圧ならびに左心室Ang IIの減少が認められ、併用投与においてはさらに減少が大きかった。このことより圧負荷による心肥大は後負荷ならびに組織Ang IIが影響していることが示された。
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