研究課題/領域番号 |
16580271
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
上木 厚子 山形大学, 農学部, 教授 (60143088)
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研究分担者 |
上木 勝司 山形大学, 農学部, 教授 (10111337)
加来 伸夫 山形大学, 農学部, 助教授 (80359570)
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キーワード | メタン生成 / 温室効果 / 嫌気性微生物 / 水田土壌 / 無酸素環境 / 水稲根 / 微生物群集構造 / 発酵性細菌 |
研究概要 |
水田は、温室効果ガスであるメタンの主要な発生源の一つである。水田から放出されるメタンは、無酸素環境である湛水水田土壌中において、偏性嫌気性微生物であるメタン生成古細菌により生成される。メタン生成の基質は、一般に酢酸塩、ギ酸塩またはH_2+CO_2であるが、これらの基質は系内の多様な発酵性の細菌の有機物分解の結果供給される。我々はこれまで水田土壌中のメタン生成系の微生物活性に注目して様々な検討を行ってきたが、その過程で、水田土壌中の異なる画分(土壌、植物残渣、水稲根、根圏土壌)や、異なる培地を用いて分離した菌株を現在多数保有している。今年度は、これらの分離菌株を用いて、以下の検討を行った。 (2)水稲根から分離した酸生成嫌気性細菌の系統的・生理的多様性 栄養の豊富な培地と貧栄養的な培地の両方を用いて水稲根から酸生成嫌気性細菌を分離し、その16S rRNA遺伝子の塩基配列の比較による系統的位置づけを行った。前者からの分離菌株は5系統に分かれたのに対し、後者からの分離菌株は14系統に分かれ、貧栄養的培地の方が、より多様な系統の細菌を分離できることが分かった。また、貧栄養培地にビタミン混合液を添加した培地で分離した菌株の中には、ビタミンにより増殖が促進され、プロピオン酸生成量が顕著に増加するものが多く含まれていた。 (2)稲わら残渣から分離したBacteroidetes門に属す菌株の記載 稲わら残渣から分離したWB4株は、偏性嫌気性グラム陰性桿菌で、グルコースから主要な生成物としてプロピオン酸を生成した。本菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定し、既知の細菌種と比較したところ、最近縁種との類似性も90%程度と低いため、新規細菌種と考えられた。本菌株の基質利用性を初めとする生理的性質や、DNAのG+C含量、菌体脂肪酸組成等の化学分類学的特徴付けを行ったところ、最近縁種の特徴との大きな違いが認められた。本菌株を基準菌株としたその記載論文を現在投稿中である。
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