研究概要 |
我々はこれまで水田土壌中のメタン生成系の微生物活性に注目して様々な検討を行ってきたが、その過程で、水田土壌中の異なる画分(土壌、植物残渣、水稲根、根圏土壌)や、異なる培地を用いて分離した菌株を現在多数保有している。今年度は、稲わらおよび水稲根残渣からの分離菌株について詳細な特徴付けの検討を行い、以下の結果を得た。 (1)稲わら残渣から分離したWB4株は、偏性嫌気性グラム陰性桿菌で、グルコースから主要な生成物としてプロピオン酸を生成した。本菌株の16Sr RNA遣伝子の塩基配列を決定し、既知の細菌種と比較したところ、最近縁種との類似性も90%程度と低いため、新規細菌種と考えられた。本菌株の基質利用性を初めとする生理的性質を調べ、DNAのG+C含量、菌体脂肪酸組成等の化学分類学的特徴付けを行ったところ、最近縁種の特徴との大きな違いが認められたため本菌株を基準菌株とした新属新種の記載論文をInt.J.Syst.Evol.Microbiol.,56,3944(2006)に公表した。 (2)水稲根残渣から分離したKB3株は偏性嫌気性グラム陰性桿菌で、発酵性細菌の培養に一般に用いているPY培地での増殖は非常に微弱であった。増殖条件について詳細な検討を行ったところ、本菌株はヘミン要求性があり、ヘミン存在下では非常に速い速度で増殖し、さらにビタミンB_<12>添加条件でプロピオン酸を旺盛に生成することが分かった。16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定し、既知の細菌種と比較したところ、最近縁種との類似性も90%以下で非常に低かった。本菌株の生理的および化学分類学的特徴付けを行ったところ、最近縁種の特徴との大きな違いが認められたため、本菌株を基準菌株とする新属新種の記載を行い、現在Int.J.Syst.Evol.Microbiol.誌に投稿中である。
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