研究概要 |
藻類や細菌によって生産されたアルカリ性ホスファターゼの活性が,様々な環境要因や微生物相互の関係によってどのような影響を受けるかを明らかにすることを目的として,以下の研究を行った。 1.奈良県香芝市の籏尾上池及び籏尾下池を対象として,2002年度以降毎月一度行っている水質調査を続行して,アルカリ性ホスファターゼ活性の季節変動と,水質ならびに微生物学的要因との関係を検討した。藻類の増殖がおう盛な夏季には調査回数を月2回ずつとした。その結果,アルカリ性ホスファターゼ活性が外界のリン濃度に影響を受けるのは,溶存反応性リン(無機リン)が20μg/Lと比較的高い場合のみであることがわかった。菌体内リン濃度とアルカリ性ホスファターゼ活性との明確な関連は認められなかった。微生物量とアルカリ性ホスファターゼ活性とには統計的に有意な関係が認められた。 2.現場のアルカリ性ホスファターゼ活性の消長(寿命)を調べるために,現場の試料を採取し,除菌を試みたが,完全に無菌状態にすることはできなかった。実験後期にはアルカリ性ホスファターゼ活性の上昇が認められたが,これは培養中に増殖した微生物由来であると考えられた。酵素活性を阻害せず,完全な滅菌を可能とする処理方法の開発が必要である。 3.海外や国内の湖沼や河川で蓄積されてきた,アルカリ性ホスファターゼに関する知見,及び藻類や細菌の培養実験方法,リン吸収・蓄積に関する知識を吸収するために関連資料の収集行った。
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