水鳥が多く飛来する池沼において水質悪化が懸念されているが、詳細な調査は行われていない。そこで、水鳥と水質の関係を明らかにする目的で、水鳥が多く飛来する日本の各地の池沼の水質調査を行った。調査池は宮島沼、伊豆沼・給餌地主池、東京港野鳥公園、片野鴨池、米子水鳥公園の5つの池沼とした。その結果、片野鴨池を除き、各地とも飛去直後に激しい富栄養状態となったが、池により影響は異なった。宮島沼では秋の渡り時期の栄養塩濃度の増加はマガンによる直接負荷ではないと考えられ、農地由来の負荷がかなり多いことが予測された。片野鴨沼は多量のガン・カモの利用にかかわらず、水質の変化は少なく水鳥の影響を抽出できなかった。伊豆沼給餌池、東京港野鳥公園及び来子水鳥公園つばさ池では明らかに水鳥の影響が現れた。 また最近、日本各地で魚食性鳥類であるカワウ(Phalacrocorax carbo)が個体数を急激に増加させ、漁業被害や森林被害を深刻化させている。カワウの影響を明らかにするため、湖畔林に約1000羽のコロニーを有している武蔵丘陵森林公園内の山田大沼を対象に調査を行った。コロニーを形成していない周辺の池沼と比較すると水質悪化が著しかった。カワウによる負荷の見積もりを行った。 冬季にのみ滞在するガン・カモ類と年間を通して水域を利用するカワウでは水質に与える影響が大きく異なることが明らかになった。
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