研究課題/領域番号 |
16580276
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
加戸 隆介 北里大学, 水産学部, 助教授 (40161137)
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研究分担者 |
難波 信由 北里大学, 水産学部, 講師 (20296429)
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キーワード | チシマフジツボ / キタムラサキウニ / 捕食動物 / 護岸壁生物群集 / 潮間帯 / キーストン種 / 基盤の凹凸 / 生物遷移 |
研究概要 |
1998年の猛暑の影響で脱落した護岸壁潮間帯生物群集の修復を図ることを目的に、岩手県越喜来湾崎浜地区の鬼間ヶ崎側護岸壁を調査地点として、チシマフジツボに着目して本研究を2年間行った。 結果 1.護岸壁の潮間帯生物群集再生を妨げているのは捕食動物:キタムラサキウニが量的、速度的に最も大きな影響を及ぼしており、このウニによるフジツボの捕食は、チシマフジツボ、キタアメリカフジツボともに、殻底長径が約7mmまでに及んだ。また、その捕食はムラサキイガイにも及んだ。肉食性腹足類のチヂミボラは捕食速度が遅いが、10mm以上のフジツボにも影響を与えることがわかった。2.チシマフジツボの存在はその後の生物相形成に不可欠:本種が付着・成長し、捕食動物による影響を防いだ板では夏にフジツボ殻を付着基質としてムラサキイガイが、冬には海藻類が付着した。しかし、本種が付着・成長しても、捕食の影響が強ければ、2年後には生物相は貧相となった。一方、チシマフジツボを剥離した板には、その後大型生物の付着は見られず、生物相は極めて貧相な状態が続いた。3.チシマフジツボは、その加入により毎年護岸壁に常に新しい凹凸面を提供する点で重要:種々の凹凸を付与したコンクリート基盤が生物相形成に与える影響を調べた結果、潮間帯中部以深では、対照の平面基盤と比べて明らかに多くの生物が付着した。しかし、基盤の凹凸は生物付着により徐々に失われていくことから考えると、2年目以降の生物相を引き続き明らかにする必要がある。 総括 護岸壁生物群集の修復・再生において、チシマフジツボがキーストン種の役割を果たしていると考えられたが、その後の群集遷移においては、捕食動物、とくにキタムラサキウニがキーストン種となっていると判断された。チシマフジツボの継続的新規加入の有無が、ムラサキイガイ群集に及ぼす影響に興味が持たれる。
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