研究概要 |
担子菌特有の生命現象を理解し、植物資源リサイクル・環境保全に有用な担子菌株を作出するためには、担子菌染色体へ目的遺伝子を効率的に導入し、高発現させるシステムが必要である。そこで、形質転換効率の低いシイタケを宿主とし、シイタケのLTR型レトロトランスポゾンをDNA素材とする高効率形質転換系の開発を計画した。本年度の研究において以下の研究成果を得た。以前、シイタケから、シトクロムP450ファミリーのほぼヘム結合ドメインだけを含む低分子量(115アミノ酸)タンパク質SHP1(small heme-binding protein 1)をコードする遺伝子shp1を分離していたが、shp1上流の塩基配列を解析したところ、LTR型レトロトランスポゾンの3'-LTR(約400bp)およびポリメラーゼ遺伝子(pol)内のインテグラーゼ遺伝子(int)をコードする配列が存在した。これら配列をもとにプライマーを設計しPCRを行った結果、約4.5kbpの断片が増幅された。本断片の全塩基配列を解析したところ、予想通り、LTR型レトロトランスポゾンであることが分かりLe.RTn1と命名した。pol領域内の逆転写酵素遺伝子(rt),RNase H遺伝子(rh),およびint遺伝子において各種生物由来のLTR型レトロトランスポゾンのそれらと高い相同性が、gag遺伝子において中程度の相同性が観察された。3'-LTR(および5'-LTR)内には14(15)および30bpの同方向繰返し配列が161bp離れて存在し、そこにTATA配列が2つ存在した。shp1転写産物がシイタケ細胞内に多量かつ安定に存在し、その転写開始点が3'-LTR内にあると推定された。このことはLTRが強いプロモーター活性を有することを示す。さらにLTR配列がシイタケ染色体上に500個以上存在していることが分かった。
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