研究課題
担子菌特有の生命現象を理解し、植物資源リサイクル・環境保全に有用な担子菌株を作出するためには、担子菌染色体へ目的遺伝子を効率的に導入し、高発現させるシステムが必要である。そこで、形質転換効率の低いシイタケなどを宿主とし、シイタケのLTR型レトロトランスポゾン(Le.RTn1)をDNA素材とする高効率形質転換系の開発を計画した。Le.RTn1は全長6213bpで、LTR部分は474bpであった。Le.RTn1は2つのORFを持ち、1つはGAGタンパク質を、他はPOLタンパク質(プロテアーゼ、逆転写酵素、RNase H、インテグラーゼの各ドメインを含む)をコードしていた。LTRにはTATA(様)ボックスが4つ連続して存在し、同方向反復配列(エンハンサー機能が予想される)が3つ(4つのTATAの上流、内部、下流に)存在していた。先にシイタケから低分子量(115アミノ酸)のヘムタンパク質SHP1をコードする遺伝子shp1を分離していたが、本遺伝子の転写産物(LTRの一部をその5'末端に含む)がシイタケ菌糸細胞内に多量に存在し、その5'末端(つまり、shp1の転写開始点)は4つのTATAの直ぐ下流に位置していることが分かった。このことはLTRが強いプロモーター活性を有することを意味する。そこで、LTRとシイタケpriA遺伝子のターミネーター(典型的な転写終結・ポリA付加シグナルを含む)の間にハイグロマイシン耐性遺伝子を挿入した発現カセットを作成し、これを持つ染色体挿入型プラスミドを担子菌アラゲカワラタケおよびシイタケ菌糸細胞内に導入した。その結果、アラゲカワラタケにおいてハイグロマイシン耐性形質転換株を複数得ることができた。本転換株の染色体上には多コピーの上記発現カセットが挿入され、発現していることが分かった。現在、シイタケについても解析中である。
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Abstract of 8^<th> European Conference on Fungal Genetics (April 8-11, Vienna, Austria) (In press)
日本農芸化学会2006年度大会講演要旨集
ページ: 121
平成17年度 東京工業大学生命科学科 分子生命コース・生体機構コース学士論文発表会講演要旨
ページ: 17
第50回日本菌学会講演要旨集 (印刷中)
平成17年度 東京工業大学大学院生命理工学研究科 分子生命科学専攻 修士論文発表会講演要旨
ページ: 39