本研究目的は、ニワトリ白血病阻害因子(LIF)を用いてニワトリ胚性細胞の未分化状態を維持できる培養系を確立し、その培養細胞を用いてニワトリにおけるジーンターゲッティング技術を確立することである。本年度は、ニワトリ胚性幹細胞培養系とその評価方法の確立およびマニュピレーションシステムの構築を目的に研究を行い以下の成果を得た。 1.ニワトリLIFの原核系・真核系リコンビナントタンパク質を作製した。特に真核系LIFはニワトリ細胞(OU2)に産生させること成功し、胚性幹細胞の維持に極めて有効であることがわかり、特許出願を行った。 2.ニワトリ膜結合型幹細胞因子(SCF)並びにニワトリIL-6の発現及びリコンビナント化に成功した。 3.ニワトリLIF・SCF・IL-6に対するモノクローナル抗体を作製し、これらの因子の検出系を確立した。特にニワトリLIFに対する抗体は、LIFの細胞内シグナル伝達系の一つであり、胚性幹細胞の未分化維持に重要な機能を発揮するSTAT3のリン酸化を阻害することが判明し、この抗体を用いることでニワトリ胚性幹細胞の未分化維持にLIFによるSTAT3のリン酸化が極めて重要であることを実証した(論文投稿中)。 4.ニワトリ未分化胚で機能すると考えられる新規転写因子のクローニングに成功した。現在特許出願並びに論文投稿の準備を進めている。この遺伝子が未分化維持のマーカー(評価方法)に利用できることを確認した。(特許出願予定のため詳細は記載しない) 5.真核型ニワトリLIFを用いた改変培地により、ニワトリ胚性幹細胞を未分化のまま5代継代できることを確認した。 6.胚性細胞の簡易移植方法を確立した。 以上の成果をもとに次年度に培養胚性細胞をターゲットにした遺伝子ノックイン・アウト技術の開発に取り組む。
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