研究概要 |
本研究の目的は、ニワトリ白血病阻害因子(LIF)を用いて、ニワトリ胚性細胞の未分化状態を維持できる培養系を確立し、その培養細胞を用いてニワトリにおけるジーンターゲッティング技術を確立することである。この技術が確立されれば、ニワトリ胚を用いた基礎研究分野からトランスジェニックニワトリを用いた応用技術の開発など多方面への技術移転が可能となる。そこで平成17年度には,ニワトリ胚性幹細胞培養系の改変,胚性幹細胞への遺伝子導入後に行うポジティブ選抜(遺伝子導入の有無:導入された細胞だけが生存)の条件検討,ネガティブ選抜(相同遺伝子組換えの有無,相同遺伝子組換えがおこらなかった細胞が死滅)の検討,並びにδ-クリスタリンを標的にしたターゲティングベクターの構築を行った. ニワトリ胚性幹細胞培養系では,いくつかの改良点を見いだし平成16年度よりもさらに有効な培養系の開発に成功した(現在,特許申請準備中のため詳細は省略する).ポジティブ選抜の条件検討では,ニワトリ胚線維芽細胞と5種の抗生物質を用いて,その濃度条件における検討を行い有効な4種の抗生物質に絞り込んだ。またネガティブ選抜には,アポトーシス法とジフテリア毒素A(DT-A)法を候補に検討を行いDT-A法が有効に機能することを確認した。さらにδ-クリスタリンのターゲティングベクターの構築を行うために,標的とするエクソンを含む約8kbpのゲノム配列をクローニングし,塩基配列を決定後,標的エクソンにマカー遺伝子であるEGFP遺伝子の挿入を行った. 本研究期間中に残念ながら「ニワトリ胚性幹細胞を用いた遺伝子ノックイン・アウト技術の確立」までには至らなかったが,この技術を確立する上で重要なニワトリ胚性幹細胞培養系の確立,ターゲティングベクターの各コンポーネントの準備並びに条件検討を行うことができた.また今後改良すべきいくつかの問題点を整理することもできた.今後,これらの研究成果をもとに本来の目的であるニワトリにおける遺伝子ノックイン・アウト技術が可能になるものと思われる.
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