好塩性酵素の変性作用に対する極めて強い耐性メカニズムを引き続き検討した。 現在までに、中度好塩菌由来のβ-ラクタマーゼとnucleoside diphosphate kinase(NDK)について、主に検討している。 β-ラクタマーゼやnucleoside diphosphate kinaseについては、その高い可溶性が、構造の高い可逆性を生み出しているという我々の仮説が適切であることが判明しつつあり、さらに詳細な分子構造と安定性、可溶性、可逆性の関係を明らかにすることを目的として、研究を進めた。 具体的には、昨年度、大量発現に成功した中度好塩菌由来593NDKと通常細菌(Pseudomonas)由来のPaNDK分子のキメラ分子(593/PaNDKとPa/593NDK)の種々性質を比較検討した。その結果、これらキメラ分子の中では、593NDKのN末端部分が高い可溶性と高い構造可逆性を担っていることが判明し、593NDK分子のN-末端側に存在している酸性アミノ酸の働きが重要であることが、具体的に示された。 593NDKおよびPaNDKの比較検討を進めた結果、そのサブユニット構造において、極めて興味深い結果が得られた。NDKは、ユビキタスな酵素で、真核生物、アーキア、グラム陽性細菌においては、そのサブユニット構造は6量体であり、グラム陰性細菌においては、4量体であることが報告されている。本研究で用いている中度好塩菌もPseudomonas菌も、いずれもグラム陰性細菌に属するので、そのサブユニット構造は4量体をとっているものと予想された。タンパク質を精製し、光散乱計で分子量を測定し、サブユニット構造を明らかにしたところ、PaNDKは、予想どおりに4量体であったが、593NDKは、2量体であった。2量体で活性を示すNDKの分離は、最初の例であり、構造形成・安定性との関係が注目される。
|