本研究における主な成果は、以下の通りである。 (1)高度好塩菌Halobacterium salinarum由来のnucloeoside diphosphate kinaseを大腸菌で活性のある形で発現させることに成功し、X-線結晶構造解析に成功したこと。その結果、多くの酸性アミノ酸の過剰な存在にもかかわらず、ポリペプチドの主鎖の構造は、他の生物のものとほとんど違いがなく、酸性アミノ酸側鎖を極めて巧妙に配置していることが判明した。 (2)中度好塩菌からHaNDK遺伝子を分離し、ホモログである通常細菌由来PaNDKとともに、大腸菌での大量発現に成功し、その性質を比較検討した。特に、HaNDKは、これまで研究されてきたNDKでは初めて2量体構造を取っていることが分かった。 (3)HaNDKとPaNDKのキメラ分子の構築と発現、精製、性質検討に成功し、PaNDKに、高い巻き戻り効率とSDS電気泳動での移動度の遅さという2つの好塩性酵素の指標を付与することができた。また、好塩性酵素の好塩性の指標は次の4点に集約される。(1)至適反応塩濃度が、より高い。(2)安定性は、塩の存在によって促進される。(3)高い可溶性からくる変性耐性、すなわち、高い巻き戻り活性をもつ。(4)そして、酸性アミノ酸含量が高いことに起因するSDS電気泳動での異常に遅い移動度。
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