植物に作用機作の異なる複数のサイレンシングサプレッサーとウイルスベクター遺伝子を導入し、これらの発現を誘導型プロモーターによって制御することで、超高効率に外来遺伝子を発現し大量に有用タンパク質を得ることができるシステムを構築することを目的として研究を行った。まず、エストロゲンまたはデキサメタゾンで活性化される転写因子と、これらの転写因子で発現が活性化されるプロモーター下流にサイレンシングサプレッサー遺伝子(HC-Pro、TBSV p19、CMV 2b、またはTSWV NSs)を連結したものを植物に導入するためのバイナリーベクターを構築し、Agrobacterium法によりNicotiana benthamiana植物の形質転換を行った。再分化によって得られた形質転換値物の葉片をエストロジェンまたはデキサメタゾン水溶液に浸漬し、導入したサイレンシングサプレッサー遺伝子の発現をノーザンハイブリダイゼーションにより確認した。その結果、これらの形質転換植物において導入したサイレンシングサプレッサー遺伝子が誘導特異的に発現することが確認できた。これらの植物のうち特にサプレッサー遺伝子の発現量の高い約2〜3ラインずつを選抜し、誘導特異的にタバコモザイクウイルス、またはブロムモザイクウイルスベクターを発現する形質転換植物(ToMV-GFP植物、BMV-GFP植物)との交配を行った。また、複数のサイレンシングサプレッサーを誘導特異的に発現する形質転換植物の作出を目的として、Hc-Pro植物とp19植物、あるいは2b植物とNSs植物の交配を行った。現在、交配によって得られた植物の解析をすすめている。
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