本研究は、培養細胞の系を利用してヘパラン硫酸/ヘパリンの生合成酵素の細胞内における集積化に関する基礎的知見の収得を目指し、生合成酵素の一つ脱N-アセチル化酵素/N-硫酸転移酵素を材料に、1)N末部位を利用した細胞内局在化機構、2)酵素ドメイン同士の相互作用の解明を目的とする。 昨年度までに、各NDSTアイソザイムの細胞質領域からステム領域に相当するN末部分を、異なるNDSTアイソザイムの酵素活性領域に連結したDNAを細胞に導入し、目的の融合蛋白を発現するような細胞を樹立し、解析を試みた。今年度はまずNDSTのN末部分のアイソザイム間でのシャッフリングとそれらのヘパラン硫酸構造形成に対する影響を解析するために、各NDSTアイソザイムの細胞質領域からステム領域に相当するN末部分と異なるNDSTアイソザイムの酵素活性領域を連結した融合蛋白を発現するような細胞を樹立し、蛋白の発現の確認を行った。さらに細胞、培地および細胞外マトリックスよりヘパラン硫酸を調整し、構造解析を行っている。また昨年度未実施であった、NDSTの酵素ドメイン間の集積化に関する知見を得るため、脱N-アセチル化酵素活性のみを顕著に有するNDST3とN-硫酸転移酵素活性のみを顕著に有するNDST4及び脱N-アセチル化酵素活性を変異により欠いたNDST1及び2それぞれの共発現を行い、ヘパラン硫酸/ヘパリンへの構造形成への影響を解析しようと試みた。具体的には、NDST3を安定的に発現するヒト293細胞を親株として、NDST4あるいはアミノ酸置換により脱N-アセチル化酵素活性が著しく減少するようなNDST1及び2が誘導的に発現するような細胞を樹立した。
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