研究概要 |
以前からコールドスプレー質量分析(CSI-MS)やNMR法を用いて水素結合を中心とする、弱い分子間力で結合する化合物の溶液動態構造解析を研究してきた。溶液中における分子間に働く相互作用の観測のために、NMRにおける自己拡散係数(D)測定が非常に有効であることを種々のステロイド化合物を用いて証明した。水素結合をしない化合物とする化合物で1次元D測定{BPP-STE (bipolar pulse pair stimulated echo)}法でDの値を求めた結果、明らかに違った検量線が得られた。また、混合物のD測定法として注目されている2次元D測定(Diffusion Ordered Spectroscopy : DOSY)法を、同程度分子量の混合溶液(グルコース、ベンゾフェノン、デカン酸メチル)の解析に用いて好結果を得た。分子量差2のステロイド化合物(エストロンとエストラジオール)や異性体であるネロールとゲラニオールの混合試料も、Dの差によってDOSYによりスペクトル分離ができた。 また、ビスグアニジノベンゼンー安息香酸から1:1,1:2,1:3,1:4の複合体を合成し、単結晶X線構造解析、CSI-MS、およびD測定を行った。CSI-MSでは、混合比から見積もられる分子量に相当するピークが観察された。また複合体のD測定から、安息香酸の比率が大きくなるほどDは小さくなる(分子体積が増加する)ことが判明した。^1H-NMRケミカルシフト値の比較からも、結晶中のみならず溶液中においても混合した比率を保った複合体を形成していることが示唆された。(Chem.Pharm.Bull.2006) 最近我々は、ここで確立したD測定法をイオン液体[bmim] Brに適用し、非常に興味ある結果を得ることができた。(Chem.Phys.Lett.2006)
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