2型糖尿病治療薬として臨床応用されているチアゾリジンジオン誘導体は、peroxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)を介して作用を発現すると考えられている。チアゾリジンジオン誘導体の血糖降下作用は強力であるが、肥満、浮腫、肝障害などの副作用を持つことから、新規薬剤開発の社会的要請が極めて強い。本研究は、PPARγを標的とする副作用のない新規構造の抗糖尿病薬の開発を目的とする。副作用を最小限にとどめるためには天然由来の化合物が良いと考えた。そこで弱いながらもPPARγの内因性リガンドとして知られている脂肪酸に着目し、中でもPPARγのポケットが大きいことから炭素数22のドコサヘキサエン酸(DHA)を選択した。次に、PPARγのポケットの形、リガンドと水素結合可能なアミノ酸残基などを考慮し、4位に水酸基を持つ4-OH-DHA並びにその水酸基酸化生成物である4-oxo-DHAをデザインした。これら2つの化合物と関連化合物約20種を、DHAを出発原料として化学合成した。これら誘導体のPPARγ標的遺伝子転写活性をルシフェラーゼアッセイ法により測定した。その結果、合成化合物の多くがDHAより強い活性を示し、特に4-OH-DHAは最強の内因性リガンドであるといわれているPGJ2より強い転写活性を示した。今後、糖尿病の動物モデルや高脂肪食摂取動物を用いて血糖降下作用を検討する。
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