申請者らは、これまで独自に、二価のパラジウムをルイス酸触媒として用いる立体選択的な分子内ヘテロ環化反応の開発を行うと共に、この反応を用いてピペリジンアルカロイドやポリエーテル類の合成を行ってきた。 今回は、新たに、アルデヒド基とアリルアルコール部を有する化合物を、アルコール存在下二価のパラジウム触媒で処理したところ、環化反応が円滑に進行し、添加したアルコールを取り込んだ環化生成物を立体選択的に得ることに成功した。また、エタノールの添加が最も良好な収率を示した。本反応はヘミアセタールを経由して進行するもので、これまで、このような反応例は報告されていない。 次に、本反応を応用をしてprelactone Cの合成を試みた。アルデヒド基と末端に2級のアリルアルコール部を有する基質を合成し、エタノール存在下二価のパラジウム触媒を用いて環化反応を行ったところ、prelactone Cとは5位の立体配置が逆である5-epi-prelactone Cが生成する事が判明した。 さらに、これらの結果を踏まえて、スピロケタール環構造を有するspirofungin Aの全合成研究を行っている。現在、分子内にケトン基と二級アルコール、末端にアリルアルコール部を有する化合物の二価のパラジウムを用いるtandem型環化反応を行うことにより、spirofungin Aの主要構成部であるスピロケタール部分の合成に成功している。
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