細胞の増殖・複製は、リン酸化-脱リン酸化を介する系と蛋白質分解を介する系(ユビキチン-プロテアソームシステム)によって調節されており、その破綻が細胞のがん化に直結すると考えられる。後者の場合、分解される運命にある蛋白質はユビキチン化された後に、分解マシーンであるプロテアソームにより分解される。本システムが、様々な細胞増殖・複製制御因子の分解に関与するという報告は枚挙の暇がないほど集積している。また、がん細胞ではプロテアソームが異常発現している。そこで、本研究では、細胞周期阻害活性の中でも、特に、ユビキチン-プロテアソームシステムに注目して海洋生物からの新規天然分子の探索を企画した。具体的には、(1)プロテアソーム阻害作用、(2)脱ユビキチン化酵素阻害作用、(3)ユビキチン活性化酵素(別名E1酵素)に対する阻害作用の3つの活性阻害作用を指標にして、海洋生物からの阻害作用を有する化合物を探索する。また、プロテアソームには、恒常的に発現するタイプ(組織普遍型プロテアソーム)と抗原提示細胞でインターフェロン刺激により発現誘導されるタイプ(免疫プロテアソーム)が知られている。そこで、免疫系には作用せず、がん細胞にのみ作用する阻害物質の単離を目指して探索を進める。そのような視点での研究は現在皆無であり、それが本研究の特色である。平成16年度は、海洋真菌の培養液から新規ユビキチン活性化酵素阻害物質を単離し構造を決定した。現在、作用機構の検討を行なっている。また、アメフラシから、新規細胞毒性物質、および、神経突起伸展活性物質を単離し、構造を決定した。
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