研究概要 |
1.ジアゼパノン環部の立体化学の推定 サンプル供給の問題と構造上の特徴から立体化学が決定に至らず、化学合成による解決が待たれていたリポシドマイシン類(1)のジアゼパノン環部の立体化学を、NMR等の情報からと予想し、モデル化合物を合成し、2S,5S,6Sと推定した。 2.ウラシル基の導入 推定した立体化学が正しいことがカプラザマシンのX線結晶解析により明らかにされた。この年、北海道大学の松田らにより、カプラザマシンのアグリコンであるカプラゾールの合成が達成されたが、これとは異なる方法論を用いた分解物の合成に取り組んだ。すなわち、先ずジアゼパノン環部を合成し、この化合物に対してウラシル基の導入を検討した。残念ながらジアゼパノン環部を有する化合物に対してウラシル基の導入には成功していないが、ジアゼパノン環の1位の窒素官能基をNs基で保護することにより、ウラシル基の導入が問題なく行なえることを見いだした。 3.ジアゼパノン環部を有する化合物に対するウラシル基の導入 ジアゼパノン環化合物の1位への直接的なNs基導入を検討した。しかし、Ns基を直接導入に成功することができず、合成ルートの見直しを行なった。このルートでは、ジアゼパノン環形成とウラシル基の導入双方にNs基の有する電子吸引性を利用する合成ルートの構築を行なっており、本方法論を用いた1の全合成を行い、リポシドマイシンの分解物の合成を達成する予定である。 研究成果1については論文にまとめた。2は、投稿中であり、3は、投稿準備中である。
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