1)不斉結晶化したベンゼンスルホンアニリドが不斉リガンドとして機能するかどうかについて、カルコンを基質とし、銅トリフラート触媒存在下、ジエチル亜鉛によるエチル基の付加反応をモデル反応として検証を行った。しかし、有意な不斉誘導は見られなかった。 2)不斉結晶化を示す他のスルホンアミドの探索を行った。合成の原料として、ラセミ化の速度が遅くなり、また金属との配位能が高くなるようσ位にエーテル基などを持つ置換ベンゼンスルポニルクロリドおよび置換アニリンを原料とし、40種のスルホンアミドを合成した。その結果、不斉結晶化を示す化合物として新規に5種の化合物を得た。 3)上記項目と平行して、より短時間で不斉結晶化を示す化合物の探索を行うことができるプロトコルの改良を行った。塩基として樹脂担持ピリジンを用いて縮合反応を行い、反応後ろ過により樹脂を取り除き、ろ液を撹拌下乾固させた後、生じた微結晶を少量とってKBr錠剤として固体CDスペクトル測定を行うことにより目的の化合物の迅速な探索が可能となっている。実際、12種類の組み合わせについて本操作を行ったところ、4化合物において分裂型のコットン効果がみられ、不斉結晶化していることを見出した。本項目について、現在投稿論文を作成している。 4)結晶化の際不斉が誘起される条件について、円偏光の照射下、結晶のキラリティーに偏りがでるどうか検討を行った。これについては有意な差は得られていない。 5)多くの芳香族スルホンアミドの結晶構造解析を行うなかで、芳香族スルホンアミドが例外なく普遍的に+synclinal型をとることを実証し、これにより第二級スルホンアミド結合を2つ持つ化合物が、結晶中で二重の水素結合による無限連鎖構造をとることを示した。本項目について、現在論文投稿中である。
|