研究概要 |
ルミナミシン(1)は11-oxatricyclo[5.3.1.^<1,7>0^<3,8>]undecane骨格に10員環ラクトン、さらに無水マレイン酸と共役したエノールエーテルを有する14員環マクロラクトンが縮環した特異的な環構造を有する化合物であり、その相対及び絶対構造は未決定である。 申請者は、まず未決定である1の全相対配置の決定を詳細なNMR解析から得られた情報と広野らが開発した自動配座解析プログラム(CAMDAS)を用いた立体配座解析を組み合わせることで行った。さらに改良Mosher法を適用することでその絶対配置を2S、4S、7R、9R、10R、11R、12S、13S、16S、28R、29Sと決定した。 続いて4の全合成研究に着手した。非常に複雑な化合物である1を全合成するにあたり、まず3っのフラグメントに分けて各フラグメントの合成を達成した。即ち、その1つである3,4-二置換フラン環を有するカルボン酸はオキサゾールとアルキナール間でDiels-Alder/retro Diels-Alder反応を行うことで非常に簡便に合成できる経路を開発した。また、3連続不斉炭素鎖を有するアルコールの合成では、Reformatsky反応とFraterのアルキル化を行うことで高立体選択的に望みの立体配置を構築した。一方、11-oxatricyclo[5.3.1.^<1,7>0^<3,8>]undecane骨格の構築においては、分子内で3級アルコールをヘテロマイケル付加後、還元することで2-oxabicyclo[2.2.2]octene骨格を効率的に構築した後、更にアルデヒドのα位の立体反転を伴った分子内アルドール縮合によりその分子骨格を効率的に構築できた。このように各フラグメントの合成を達成し、その全合成に道を開くことができた。
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