研究概要 |
Cephalostatin類は1988年にPettit等により南アフリカ産の海洋ミミズの一種であるCephalodiscus gilchristiより単離されたステロイド2量体であり、構造上の特徴として側鎖部にスピロアセタール環を有するとともにピラジン環を介して2量化していることが挙げられる。Cephalostatin類は強力な細胞成長抑制作用を有する。一方、伏谷等は1994年に群体ホヤRitterella tokiokaから強力な細胞毒性を有するステロイド2量体としてritterazine類を単離している。これらステロイド2量体が抗がん剤のリード化合物として期待されることから、共通の合成戦略の基にこれらステロイド2量体の合成法の確立と生理作用発現における構造活性相関に興味が持たれる。ステロイド2量体の合成においては、スピロアセタール部の立体選択的な構築法の確立とピラジン環形成による2量化が課題となる。本年度は、ステロイド側鎖部の立体選択的構築法の確立を目的として検討したところ、スピロ体の前駆体である16-デヒドロ-22-ヒドロキシステロイドの立体選択的合成に成功した。すなわち、(17E)-16α-ヒドロキシ-17(20)-プレグネンとジメチルジアゾマロネートから調製できる[(17E)-6β-メトキシ-3α,5-シクロ-5α-プレグ-17(20)-ネン-16α-イル]オキシプロパン二酸ジメチルエステルを塩化リチウムとともにHMPA中で加熱すると、Wittig転位と脱メトキシカルボニル化が一挙に進行し、(20S,22S)-22-ヒドロキシ-6β-メトキシ-3α,5-シクロ-24-nor-5α-16-コレン-23-酸メチルエステルが主生成物として得られることを見出した。本化合物は16位のアルケンを足場にすることで16β,17α-ジオール基の導入も可能であり、cephalostatin類やritterazine類の側鎖部合成における重要な合成中間体となりうるものと考えられる。
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