研究概要 |
1.硫酸化チロシン残基を含むチオエステルセグメントの調製法の確立とケモカインレセプターN末端部の硫酸化チロシンクラスターの合成. すでにチオエステルセグメント縮合法によりC末端部分に硫酸化チロシンを含む大分子型の硫酸化ペプチドの合成を行ったが[Kitagawa et al.,Tetrahedron(2004)]、今回N末端部に硫酸化チロシンを含むケモカインレセプターN末端部ペプチドを合成するにあたり、硫酸化チロシン残基を含むチオエステルセグメントの調製を試みた。1〜2残基の硫酸化チロシンを含む保護ペプチドを固相合成したのち、チオエステル化、次いで低温化での脱保護(TFA)を行ったところ、比較的純度よく硫酸化チロシン残基を含むチオエステルセグメントを得ることができた。現在、反応の最適化を行っており、次年度には、このチオエステルセグメントを用いてセグメント縮合を試みる予定である。 2.硫酸化α-コノトキシンの合成に関する研究. 3種類の硫酸化α-コノトキシンの固相合成に関する論文を作成中である。さらに新規な固相合成法として、ペプチド中のAsp残基の側鎖カルボキシル基やCys残基のスルフヒドリル基を介して固相樹脂を結合させて合成を行うSide-chain anchoring strategyでのα-コノトキシンの合成を継続中である。 3.硫酸化ペプチドのMALDI-TOFMS分析とペプチド・タンパク中の硫酸化部位の同定に関する研究. 硫酸化チロシンとチロシンのキモトリプシンに対する挙動の違いと質量分析を組み合わせることにより、タンパク質中のどのチロシン残基が硫酸化されているかを迅速に同定することが可能と考え、基礎研究を行っている。モデルペプチドとして3残基の硫酸化チロシンを含むペプチドとともに、部分的に脱硫酸化したペプチドを合成した。次年度に本学に導入が予定されているMALDI-TOFMSにより、研究を進展させる。 4.化学合成硫酸化ペプチドを用いたラット・コレシストキニン(CCK)ペプチドの生合成に関する研究. 化学合成したラット・CCKペプチドを用いたBeinfeld教授(米国タフツ大学)との共同研究が進んでいる。前駆体タンパク質からCCKペプチドを産生するのに関与すると考えられているProhormone Convertase 1および5の発現を抑制した系で、CCKペプチドの分泌が顕著に抑制されること、また、産生されるCCKペプチドの分子サイズも変化することを明らかにした。
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