研究概要 |
イオン電極はこれまで無機イオンの検出を中心に優れた「イオノフォア」の開発を目指して研究が進められてきた。私達は、これを有機イオンの検出に展開させるために、特に、「分子レセプター」と呼ばれる有機イオンの親水性基と疎水性基の両方を認識するイオノフォアの開発に関心をもち、研究を進めた。カリックス[6]アレーン誘導体のベンゼン環のパラ位の部分を様々なアルキル基で置換したものを合成し検討した結果、置換基をより嵩高くするにつれ、特定の有機アンモニウムイオン(メチルアンモニウムあるいはエチルアンモニウム)を選択的に識別することが見出された。特に1,1,3,3-テトラメチルブチル基で置換した誘導体ではメチルアンモニウムに対して、これまで最高の認識能をもつイオン電極になった。また、ボスホリル(P=0)基が有機アンモニウムのNH_3^+基と強い相互作用を示すことを利用して、セロトニン(生体アミン)あるいはメキシレチン(抗不整脈薬)を識別する電極も開発した。 一方、イオン電極法の応用として、私達は、グラム陽性菌と陰性菌の膜構造の違いに注目して、抗菌性ペプチドの膜透過性および膜電位変化に及ぼす影響を系統的に検討した。さらに、本研究では、人工膜リボソームの透過性変化の測定に電極法と蛍光法を同時に応用することを試みた。すなわち、イオン電極で定量できるK^+と蛍光法で定量できるカルセインを同時にリボソーム内水相に封入し、これらサイズの異なる二種類のマーカーの流出挙動の違いから薬物作用を検討することを試みた。また本研究では、非ステロイド系抗炎症薬による胃粘膜障害作用は細胞膜の透過性増大に起因することを、イオン電極法による細胞質からのK^+流出の測定から明らかにしている。
|