研究概要 |
シスプラチン耐性がん細胞に対して高い増殖抑制を示すヒドロキソおよびアゾール架橋複核白金錯体が示す次の3つの新奇反応、すなわち、 (1)正方平面白金錯体のプロトネーション協奏型配位子置換反応 (2)配位結合に基づかない核酸塩基との相互作用 (3)架橋配位子としてトリアゾールを用いた場合に認められる白金配位の分子内転位反応 の詳細を明らかにし、シスプラチン耐性がん細胞に対する活性との関連を考察することを目的として、平成18年度は以下の成果を得た。 1.本複核錯体とDNAとの非共有結合性相互作用を詳細に検討するために、特定の配列を有する自己相補的合成オリゴマー(5'-CAATCCGGATTG-3')・(3'-GTTAGGCCTAAC-5')を用いて、NMR(NOESY)法を適用し、複核錯体がマイナーグルーブのAT配列に接近し、非共有結合性相互作用を示すことを認めた。 2.マウス白血病細胞L1210を用いて、白金錯体曝露時のアポトーシス誘導関連タンパク質の関与を検索した。その結果、シスプラチン曝露ではカスパーゼ3、8および9が活性化された。一方、複核錯体ではカスパーゼ8の関与がみとめられなかった。すなわち、複核錯体ではミトコンドリアからのシトクロムcの放出を介さずにカスパーゼ9を活性化させ、ポトーシスを誘導している可能性があると判断した。 3.架橋配位子として1,2,3-トリアゾールを含む複核錯体において、核酸塩基との反応進行過程で、N2-Pt結合がN3-Pt結合へ転位することを1H-NMR法により明らかにした。なお、本研究は本基盤研究(C)の開始初期2年の間研究分担者として参加していた米田誠治博士が海外において遂行した。
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