研究概要 |
パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患においては、小胞体ストレスが重要な役割を演じていることが知られている。またアルツハイマー病脳では免疫系の亢進が認められている。そこで脳における炎症と小胞体ストレスとの関連について検討した。本研究において得られた知見を以下に示す。 1)初代培養グリア細胞において、自然免疫系TLR4受容体のリガンドであるリポ多糖(LPS)刺激時の誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOs)発現誘導に対し、小胞体ストレス刺激はこのiNOs発現を蛋白質レベルで抑制した。一方、iNOSのmRNA誘導には影響が認められず、検討の結果小胞体ストレス刺激はiNOs蛋白質の分解を促進することが明かとなった。 2)小胞体ストレス関連分子、とくに折りたたみ不完全な蛋白質を分解する小胞体関連分解(ユビキチン-プロテアソーム系)に重要なユビキチンリガーゼ(HRD1)の発現が、脳虚血時にどのように変化するかを脳虚血モデル動物および低酸素負荷した神経細胞・グリア細胞を用いて検討下結果、脳虚血モデル動物および低酸素負荷した神経細胞・グリア細胞においてHRD1mRNA発現が誘導された。従って、HRD1は脳虚血時の神経保護に重要な役割を演じていることが示唆された。 3)脳虚血モデル、低酸素虚血モデルを用いて、ケミカルシャペロンとして知られている4-フェニル酪酸を投与した時の神経細胞死への作用を検討した結果、4-フェニル酪酸に脳虚血障害改善作用が認められた。さらに4-フェニル酪酸の作用機序を明らかにする目的で、小胞体ストレス反応におけるGRP78誘導,転写因子CHOPの誘導、小胞体ストレスセンサーIRE1の下流で惹起されるXBP-1のスプライシング、eIF2αリン酸化に及ぼす4-フェニル酪酸の作用を検討した結果、4-フェニル酪酸はこれらの小胞体ストレス応答を軽減した。
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