研究概要 |
1.酵母のポリアミン輸送系について解析した。1)ポリアミン輸送タンパク質TPO1が細胞膜に存在し、ポリアミンを排出すること、及び、細胞質側に存在する3個のSer/Thr残基のリン酸化により、輸送活性や細胞膜への移行が調節されていること、また、これらのアミノ酸残基はprotein kinase C、casein kinase 1及びcAMP-dependent protein kinase 1&2によりリン酸化されることを明らかにした。2)YKL174c遺伝子のコードするTPO5タンパク質がpost-Golgi小胞に存在し、ポリアミン排出活性を有すること、及び、この過程にはendocytosisとexccytosisが関わることを明らかにした。3)細胞膜に存在する尿素輸送蛋白質DUR3とS-adenosylmethionine輸送蛋白質SAM3がポリアミンに特異性の高い輸送蛋白質であることを見出した。 2.神経可塑性に重要な役割を果たすNMDA(N-methyl-D-aspatate)受容体は、そのN末端領域にポリアミン等種々の調節物質が結合してNMDA受容体活性調節を行う調節領域(R-domain)が存在する。NMDA受容体サブユニットNRI、NR2A、及びNR2Bの3種のR-domain蛋白質(NRI-R, NR2A-R及びNR2B-R)を精製し、スペルミンやイフェンプロジルとの結合活性を検討した。NR1-R, NR2A-R及びNR2B-Rとスペルミンは結合活性を示した。イフェンプロジルはNR1-R及びNR2B-Rとは結合したが、NR2A-Rとは結合しなかった。NR1-Rとスペルミンとの結合はイフェンプロジルによって阻害されず、また、NR1-Rとイフェンプロジルとの結合もスペルミンにより阻害されなかったことから、R-domain上の結合部位が異なることが示唆された。
|