研究概要 |
1 副腎白質ジストロフィー(ALD)において最初に症状が現れる脳及び副腎由来の細胞であるグリオーマ細胞株(U87,T98G)、神経芽細胞株(IMR32)、副腎皮質由来細胞株(NCI-H295)についてペルオキシソーム膜ABCタンパク質(PMP70,ALDP)の発現や脂肪酸β酸化活性についての検討を行った。またヒト骨髄単球性白血病細胞株(THP-1)についても同様に実験を行った。その結果、NCI-H295やU87細胞で高いALDPの発現と極長鎖脂肪酸β酸化活性が認められた。またTHP-1をマクロファージに誘導することによりALDPの発現量が約6倍増加することが認められた。 一方、ALD mRNAをターゲットとしたsiRNAを作成してALDPのノックダウン細胞の取得を試みた。その結果、80%以上のALDPの発現をノックダウンした細胞を得ることができた。さらにこの配列を組み込んだsiRNA発現ベクター作成し、様々な標的細胞でALDPをノックダウンすることが可能となり、ALDPやアシルCoA合成酵素の機能解析のための準備ができた。 2 ALDノックアウトマウスおよび正常マウスの肝臓及び脳を採取し、ALDPやPMP70の発現及び極長鎖脂肪酸含量の分析を行った。その結果、ALDノックアウトマウスでは各組織においてALDPの発現は認められず、脳において極長鎖脂肪酸含量が増加していた。現在、マウス脳からのグリア細胞の初代培養を試みている。 3 ALD患者由来繊維芽細胞では植物フラボノイド(baicalein 5,6,7-trimethyl ether)が極長鎖脂肪酸のβ酸化活性を正常化した。またこのフラボノイド誘導体ALD患者由来繊維芽細胞の極長鎖脂肪酸のコレステロールエステルへの取り込みを抑え、また極長鎖脂肪酸の含量を低下させた。現在、その作用メカニズムとアシルCoA合成酵素との関連性について検討している。さらにALDノックアウトマウスに植物フラボノイドを3か月間食餌として投与し、各組織に含まれる脂肪酸含量をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、脳では極長鎖脂肪酸含量の低下は認められなかった。
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