研究概要 |
2種類のSprouty-2転写物とそれらのEGFシグナルに及ぼす影響について 肺癌を中心とした各種ヒト癌細胞株におけるSprouty-2転写物の二つのタイプ、L-Spry2(約4kbからなるlong formでその発現はERK系に依存するタイプ)とS-Spry-2(約2.5kbからなるshort formでその発現はERK系に依存しないタイプ)と発現量とEGF受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(イレッサ)に対する感受性についての相関性について検討した。 EGFR高発現細胞株(扁平上皮細胞株A431)、及び非小細胞肺癌株(肺扁平上皮癌細胞株LC1sq、肺腺癌細胞株PC9など)について、EGFRの発現量、活性化レベル(Western blot)Sprouty-2 mRNAの発現タイプ(Northern blot/ real time PCR)、イレッサ感受性(WST assay, FACS)を調べたところ、L-Spry2のみを高発現する肺癌細胞が最も感受性が高く、S-Spry2のみを高発現するものではイレッサ抵抗性になることがわかった。また、EGFR発現量はその感受性に影響しなかった。 そもそも、Srouty-2はEGFRのnegative regulatorであるc-Cblに拮抗することが知られているが、S-Spry2の転写がERK経路に依存しないことから、イレッサによってもその発現が抑制されず、抵抗性の原因になるのではないかと考えられた。昨年、イレッサ感受性の決定因子としてEGFRの活性型変異体の有無があげられたが、本研究においても同様の結果が得られている。今後の新しいイレッサ感受性決定因子としてのSprouty-2の役割について更に解析をすすめる予定である。
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