研究概要 |
ヒトT細胞系白血病細胞株を用いて以下の研究を行った. 1.各ACh受容体サブタイプに選択的なsiRNAの構築 M_3およびM_5ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR),あるいはα7ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)発現を効率良く抑制するsmall interfering RNA(siRNA)を構築して,ヒトT細胞系白血病細胞CCRF-CEMに導入した.これらのsiRNAによりCCRR-CEM細胞における各遺伝子発現量は対照群の約40-50%にまで減弱した.各受容体ノックアウト細胞において,mAChRあるいはnAChRを介する細胞内Ca^<2+>シグナルが選択的に減弱したことから,M_3およびM_5 mAChR,およびα7 nAChRを介する細胞内Ca^<2+>シグナル伝達機構の存在が明らかとなった.現在さらにα5 nAChRに選択的なsiRNAの影響を検討中である. 2.CD11aを介するコリン作動系活性の調節機構: 抗CD11a抗体により,ヒトT細胞系白血病細胞株MOLT-3においてコリン作動系活性が上昇した.この上昇作用はスタチン系薬simvastatinにより抑制された.すなわち,スタチン系薬の免疫抑制作用の一部に,CD11aを介するT細胞コリン作動系の活性調節の関与が示唆された. 3.アセチルコリン(ACh)合成酵素コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)cDNAおよび抗親和性コリントランスポーター(CHT1)遺伝子の導入: 各ヒトChAT mRNA(R,N1,N2,Mタイプ)およびCHT1をコードするcDNAをヒトT細胞系細胞株に導入して,発現量をRT-PCR法およびウェスタンブロティング法により検討した.現在,cDNA導入効率が20%程度と低かったために,解析が困難であった.現在50%以上の導入効率を目指して,cDNA導入条件について再検討中である.
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