研究課題
基盤研究(C)
【目的】ミトコンドリア機能異常は、ミトコンドリア内酵素活性変化およびミトコンドリア遺伝子の発現変化あるいは損傷に起因すると考えられる。しかしながら、グルタミン酸誘発性神経細胞傷害におけるミトコンドリア遺伝子発現変化の関与については十分に解析されていないのが現状である。したがって、本研究ではグルタミン酸刺激によるミトコンドリア遺伝子の発現変化について解析した。【方法】培養12日目のddYマウス大脳皮質由来初代培養神経細胞に100μMグルタミン酸を15分間暴露し、洗浄後に培養を一定時間継続した。神経細胞死は、MTT還元活性およびヘキスト33342染色法により解析した。ミトコンドリアmRNAおよびミトコンドリアDNAの変化は、それぞれノザンブロット法およびサザンブロット法により解析した。ミトコンドリア電子伝達系の一つであるNADH脱水素酵素(複合体I)活性が測定された。【結果】グルタミン酸処理後4時間からMTT還元活性の有意な低下がみられ、24時間では約40%まで低下した。また、本処理後6時間から著明な細胞核の凝集が確認された。このような条件下で、ミトコンドリアmRNAの発現変化を解析したところ、NADH-ユビキノン酸化還元酵素サブユニット(ND1およびND6)が処理後6時間以降で著明に減少することが判明した。しかしながら、シトクロムc酸化酵素サブユニット(CO1)には有意な変化はみられなかった。一方、ミトコンドリアDNAは少なくとも処理後12時間までは著変は認められなかった。また、複合体I活性は処理後2時間以降に著明な低下が観察された。【考察】大脳皮質由来初代培養神経細胞において、グルタミン酸暴露は神経細胞傷害に先だってミトコンドリア機能を低下させるとともに、ND1およびND6 mRNAの発現量を著しい減少させることは明らかとなった。
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