研究課題/領域番号 |
16590085
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
今井 輝子 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (70176478)
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研究分担者 |
橋本 満 熊本大学, 大学院・医学薬学研究部, 助手 (80359968)
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キーワード | カルボキシルエステラーゼ / 加水分解 / 分子設計 / 基質認識性 / キメラ酵素 / アシル基転移 / 部位特異的変異体 / プロドラッグ |
研究概要 |
本研究はエステル含有薬物の代謝のほとんどを担っているカルボキシルエステラーゼ(CES)の反応部位の構造解析により、CES-基質反応メカニズムを基礎にしたエステル含有薬物の創薬戦略を確立することを目的としている。CESによる加水分解は、2段階の反応で進行する。まず、基質がCESに認識されて、活性中心のSer残基に基質のアシル基が共有結合し、それと同時にアルコール基が解離する。次に、水分子の攻撃により、アシル基が酵素から脱離して反応が終了する。この各段階における基質の結合および反応生成物の脱離にかかわる酵素領域の微環境を明らかにするため、基質認識性の異なるCESアイソザイム間のキメラ酵素および部位特異的変異体を作製し、基質との反応に関与するドメインを明らかにするとともに、それぞれの反応過程における酵素の基質構造要求性について検討した。 まず、基質認識性の異なる同じファミリーのCESを用いて、キメラ酵素を作製した結果、基質認識については、N末側120番目までのアミノ酸配列が重要であることが判明した。この部位はアイソザイム間で相同性が高い領域であり、詳細については部位特異的変異体による検討および反応速度論的な解析を行っている。さらに、ヒトCESアイソザイムの大量発現系の構築に成功し、基質認識性について詳細な検討を現在行っている。その結果、CES1ファミリーとCES2ファミリーの相同性は50%程度であるが、その基質認識性は著しく異なることを明らかにした。例えば、肝臓での活性に関わるCES1酵素は幅広い構造認識能を持ち高い活性を有するのに対し、小腸に発現するCES2酵素は基質が結合した後の、アシル基とセリン残基との反応において、立体障害があるものと考えられた。また、CES1酵素にはアシル基転移活性があることを見出しており、非常に興味ある知見を得ている。これらの成果についての論文は、現在準備中である。
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