研究概要 |
アレルギーやリュウマチなどの自己免疫疾患は、免疫反応の正常な維持監視機構の破綻により、引き起こされる。このような病態では、抗炎症療法とともに、免疫反応とりわけT細胞の活性化の制御(抑制)が、その治療に有効である。ガンやエイズにおける予防、治療のためのワクチン開発でも、ワクチンの有効性を高めることにおいて、免疫応答の制御は非常に重要な課題である。 本研究の目的は、自己免疫疾患治療、ガンやエイズの有効なワクチン開発に重点をおいた抗体医薬の遺伝子治療への応用を目標に、補助刺激分子に特異的なヒト抗体(阻害抗体)による免疫応答制御の効果を詳細に検討し、その抗体遺伝子を搭載したウイルスベクターによるT細胞応答の制御を評価することである。 そこで、本研究では、抗体による免疫細胞への標的化と補助刺激シグナル制御の機構を詳細に検討することで、T細胞、B細胞、抗原提示細胞の免疫応答をコントロールするシステムを確立することを目指した。すなわち,ファージ抗体ライブラリから単離した阻害抗体による補助刺激シグナルの変化とその免疫応答への影響を,ヒト抹消血リンパ球(PBMC)を用いたT細胞増殖試験、抗体産生試験、サイトカイン産生、CTL(細胞障害性Tリンパ球)活性によって検討した。次に、抗体遺伝子を搭載したセンダイウイルスベクターを構築、感染させ、分泌される補助刺激分子に特異的な抗体による抗原による免疫時の免疫応答の解析を行うことを試みた。しかし、センダイウイルス感染後の動物細胞で目的の抗体の十分な産生が見られず、種々検討したが当初の目的が達成できなかった。発現が低い理由として、導入したヒト抗体の安定性に原因があることが示唆された。よって、今後は、抗体の蛋白工学的な改変による安定化の方策を視野に入れながら、研究を進めていくこととした。
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