研究課題
1.アンドロゲン産生細胞を用いた、アンドロゲン産生に及ぼす化学物質の影響を解明するためのin vitroアッセイ系を確立した。ブタ精巣ライディッヒ細胞の初代培養系を利用して、アンドロゲン産生に及ぼす化学物質の影響を検討するためのin vitroアッセイ系を構築した。生後2週齢の幼若ブタ精巣から分離したライディッヒ細胞はその含量が高いことや、ライディッヒ細胞におけるテストステロン産生経路はヒトの場合と類似することからヒトのモデルとして有用であると考えられる。2.このアッセイ系を利用することにより、有機スズ化合物の精巣テストステロン産生に及ぼす影響を検討した。TBT、DBTおよびTPTは細胞毒性が認められない低濃度の暴露でテストステロン産生を有意に抑制することを明らかにした。次にこの作用機序を検討した。その結果、TBT暴露により引き起こされるライディッヒ細胞のテストステロン産生抑制はLH受容体依存性のシグナル伝達により引き起こされる細胞内cAMPの上昇を抑制すると同時に、CYP17 mRNAレベルの低下が認められることから、転写レベルでCYP17の活性を抑制することがテストステロン産生抑制に関与することを見いだした。また、テストステロン産生に関与している酵素であるCYP11A、CYP17、3β-HSDおよび17β-HSDに対するTBTおよびTPTの直接作用を検討した結果、比較的高濃度であるが精巣のテストステロン産生に特異的な酵素である17β-HSD活性を特異的に阻害することも見いだしている。従って、有機スズ化合物のテストステロン産生抑制に関する作用機序として、ステロイド合成酵素の転写レベルでの抑制や酵素阻害による可能性が考えられる。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (1件)
FOOD INGREDIENTS JOURNAL OF JAPAN 2009,(8)
ページ: 638-647