研究概要 |
著者は最近、新規化合物3,6-dinitorobenzo[e]pyrene(3,6-DNBeP)を大阪府高槻市の土壌中から主要な変異原性物質として単離・同定した。今年度は3,6-DNBePのネズミチフス菌に対する変異原性を試験するとともに高槻市以外の表層土壌中に3,6-DNBePが含まれるか否か検討を行った。 3,6-DNBePはネズミチフス菌TA98、TA100、YG1024、YG1029に対し、S9mix非存在下において強い変異原性を示し、1nmolあたりTA98及びTA100株に対し285000 revertants(rev.)及び14000 rev.を誘発した。この活性は、既知変異原性物質中、最も活性の強い1,8-dinitropyreneのそれと同程度であった。また、3,6-DNBePはTA98及びTA100のO-アセチル転移酵素高産生株であるYG1024及びYG1029に対し、親菌株より顕著に強い活性を示した。以上のことから、3,6-DNBePが特にフレームシフト型突然変異を強く誘発し、変異原性発現にO-アセチル転移酵素による代謝が関与していることがわかった。 大阪府(泉大津市,高石市)及び愛知県(名古屋市,碧南市)において採取した表層土壌からアセトン-ソックスレー法により得た抽出物はTA98株に対し、1240〜14460rev./mgの変異原性を示した。各土壌抽出物からSephadex LH-20カラム、シリカゲルカラム及びODS中圧カラムを用いて分画することにより、土壌抽出物の変異原性の約30%に相当するFr.3が得られた。Fr.3をCOSMOSIL 5C_<18>-AR-IIカラム及びPhenyl-Hexylカラムを用い分画した結果、3,6-DNBePが検出され、各土壌抽出物の変異原性の22〜29%が3,6-DNBePによるものであることがわかった。
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